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TOP > エンターテイメント > 河合龍之介　I´m a 映画人

女優の石原真理子さんが、自身の恋愛経験を赤裸々に告白した「ふぞろいな秘密」。自らメガホンを取り、映画化されることが決定したが、石原マリコ（役名）の相手役として選ばれたのが河合龍之介さん。独特な感性の石原真理子監督の描く世界で、河合さんはどう演じるべきなのか？　そこには葛藤もあったようです。クランクアップ直後の河合さんに、今回の作品が持つ意味を語ってもらいました！

インタビュー・文：伊藤友紀（ユーサイド編集部）

鮮烈なDVシーンや、ラブシーンを越えて——
河合龍之介の「愛」とは？　「恋」とは？

——今回の役「山置洋二」は、実在の人物がモチーフになっていますが、役づくりの上で何を重要視しましたか？
河合龍之介：石原真理子監督に「この作品はあくまでもフィクションにしたい。河合君を選んだ時点で、河合君の色を反映して欲しい」と言われてたし、それは玉置浩二さんへの礼儀として、自分の信念でもあったので、その意思を貫きました。山置は、曲を作っている時は、とても繊細で冷静に自分を見つめることができるけれど、恋愛やプライベートになると情熱的と言うか、感情的になってしまうところがあって、その差をどう出していけばよいのかと悩みましたね。僕はどちらかと言うと、繊細で、普段から感情的になったりせず、人とぶつかることも嫌いな人間です。だから、山置の情熱的な部分を「自分の中から引き出して演じる」というのが大きな課題でしたね。
——実際に、山置と共感できた部分はありますか？
河合龍之介：山置ほど激しいものではありませんでしたが、僕もかつて女性に対して、ヒステリックになってしまっていた時期があります。今回、激しいドメスティックバイオレンス（DV）のシーンがあるので、その体験を回想していこうと思ったんですが、これまで自分自身が抑えつけてきた感情を、また出すことがとても苦しかった。でも、あえて出すことによって、もしかしたら、自分自身も救われるかもしれないと思い、この役を引き受けたんです。
——作品、役を通じて伝えたいメッセージは？
河合龍之介：この映画は「恋すること」と「愛すること」との意味、そしてどんな違いがあるのかを投げかけ、その間で揺れ動いた“人間”の作品です。「純愛」っていうのは、とても難しく、「ピュアなだけが純愛ではない、そして恋と愛は別の物だ」と僕は思います。

「恋」は一方的で自分よがりでも成立するけど、「愛」は自分を投げ打ってでも、相手のことを想えることじゃないかな。だから僕は、山置は“愛”ではなかったと思うんですよね。まぁ、結果的には愛がどんなものであるのかに、山置も気付けたと思うんですけど……。えっ？　理想の女性像ですか？僕は古風なんで、一歩後ろをついて来てくれるような女性……だけど、実は操られてる！　っていうのが理想(笑)。少ない恋愛経験からで申し訳ないのですが、いつも、うまいこと操作されてる感があるんですよね。だからこそ、度量の大きい女性に手のひらで遊ばれてた方が、僕は幸せです(笑)。

人が人を作り、それが作品に表れる——
映画俳優としての在り方を、体感した日々

——この作品は、河合さんの俳優人生において、どのような
位置づけになりましたか？
河合龍之介：今までと対極にある役だったし、ずっと僕の作品を見てきてくれた方にとっては、ショッキングなシーンもあるから、特別な思いはあります。でもこれは、必ずどこかで越えるべき壁なので、他の仕事と何も変わらないですね。
——成長できた部分はありましたか？
河合龍之介：3割ほどの力の入れ具合で“自分”を表現できたということです。たとえ自分のやりたいことが10割の力で表現できたとしても、それがひとりよがりなものであったとしたら、それは俳優として駄目だと思う。今まで現場に入ると、妙に肩に力が入り過ぎたり、芝居に対する欲が出てしまって、緊張というか、硬直してしまう自分がいたんです。それも少しは必要だろうけど、基本的に、そんな自意識は必要ないもの。それが今回は、リラックスした状態で居られた気がします。あとの7割の可能性が、監督の演出であったり、監督の思い描いているものだったり、スタッフさんの力であったり、それらが合わさって10割になることが、いい作品なのではと思います。本当に和気あいあいとした、いい現場でした。後藤理沙ちゃんとはすごく気があって、休憩中にトランプで遊んだりしてたんですよ！
——出来上がった作品の率直な感想をお願いします。
河合龍之介：女優さんとして素晴らしい人が、監督としてどう飛躍されるのか期待していましたが、やはりいい作品になったと思います。僕、映画が好きでたくさん見てるんですけど、異業種の監督さんが撮影をすると、いい映画が出来ることが多いと感じます。それが映画の力なんですよね。石原監督は演出や出演者への気配りなども素晴らしかったので、これが映像に表れてると思いますね。

ライブシーンですかね(笑)。世間的には、DVやラブシーンが激しいんじゃないか？など、その辺りがフィーチャーされてますけど、ライブシーンが華やかでなければ、人気のミュージシャンが、そこから落ちていく姿、変化していく姿のギャップが出てこない。とにかくライブシーンをカッコイイものにしないと、この映画は成り立たないと考えていたので、時間もかけました。没頭できた証しだと思うんですけど、実は、ライブシーンの記憶があまりないんですよ。どんな風に演じるとか頭で考えないで、体で表現していたということだと思うんですけどね。まだ見てないけど、出来上がりが今から楽しみです。